鱧のしゃぶしゃぶ

8月の京都は大文字五山送り火、地蔵盆など夏のイベントが多く開かれます。

京都盆地特有の蒸し暑さの中、多くの観光客などで賑わいます。

ご先祖様や地域の地蔵さまに感謝し、これからの1年の平安、無事を願います。

今月は夏の暑い時期の美味 “鱧のしゃぶしゃぶ” をご紹介させていただきます。

その昔、輸送手段がまだ発達していない時代、海から遠く離れた京の都に

唯一運ぶことができた魚は生命力の強い鱧でした。

水から離れても長時間生きていられる生命力の強い鱧。この生命力を頂く意味で、夏の滋養強壮に重宝されてきました。

栄養価が高く、肌の老化防止に効果のあるコンドロイチンやビタミンAも豊富に含む美容食でもあります。

熟練の技で繊細に骨切りされ、整然とお皿に鱧が盛り付けられたさまは非常に美しく見事です。この鱧をお湯の中につけるとぱっと花が咲いてとても綺麗です。まるで牡丹の花が咲いたようです。

会席の中でも御椀の牡丹鱧は有名で、この時期京都ではとてもよく使われます。

当店でも季節限定で鱧のしゃぶしゃぶをご用意しております。

特製のお出汁でいただくオリジナルのしゃぶしゃぶで、お客様にはご好評いただいております。

このお出汁は手間ひまをかけて丁寧に引いたお出汁に、独自に配合した“かえし”を合わせブレンドした「秘伝のだし」でございます。かつお節の豊潤な香りと奥深い味わいはここでしか味わえない逸品でございます。

鱧しゃぶの野菜

鱧しゃぶには旬の京野菜がよく合います。

特に京水菜との相性が良く欠かせません。

その他にも九条ねぎ、白菜。さらには京豆腐、京ゆばを加えるととても京都らしくなります。まさに盛夏のご馳走であるとおもいます。

お出汁の他に当店自家製のポン酢でもお召し上がりいただけます。お好みでネギやもみじおろしなどの薬味を加えていただくとより一層美味しくなります。

鱧の産地

関西では兵庫県淡路の鱧が有名です。

その中でも沼島の鱧が上質で美味しいとされています。この時期しっかりと脂がのって体色は美しい金色をしています。

そのほか最高級と言われるのが韓国産の鱧です。

韓国産の鱧は小骨が柔らかく、脂の乗りもよく国産の鱧に比べると違いがよくわかります。韓国産の鱧は日本産の約２倍の価格で取引されています。

韓国でも鱧のしゃぶしゃぶがあり、韓国野菜とコチジャンなどの辛味の強いタレをつけて食べるようです。

鱧の骨切り

鱧の体には合計3500本もの骨があると言われています。

鱧の体をレントゲン写真で撮影すると体中に無数の骨があり驚かされます。

この骨を切る骨切りの技術は京都で“骨切り10年”と呼ばれるほど熟練を要します。

この骨切りがうまくできていないと皮のすぐ上にある小骨が口に残って

美味しくありません。この小骨が残らないように皮１枚残して切るのが

料理人の腕の見せ所です。

丁寧に骨切りした鱧の切り身をセンス良くにお皿に盛り付けます。

鱧の雑炊

お鍋の後は締めの雑炊です。

鱧の旨味がたっぷりと出た後のお出汁に白ご飯を入れ、お好みで塩やポン酢で

味を調整いたします。そこに溶いた卵を入れて火を止めれば出来上がりです。

雑炊と同様京都では“おじや”が好まれます。

雑炊が比較的さらりとした仕上がりであるのに対して、おじやは汁気がなく濃厚な仕上がりになります。

雑炊はご飯と汁を温めるだけ、それに対して雑炊は煮込んで水分を飛ばして

ご飯の粒の形を残さないのが一般的です。

瓢斗 京都店では季節限定で鱧しゃぶののほか鱧会席のコースをご用意しております。この時期にしかあじわうことのできない逸品でございます。

是非ともご賞味くださいませ。

ここまで長きにわたりご清覧ありがとうございました。

瓢斗 京都店

料理長　山本耕作